三木露風が、この「赤とんぼ」の詩を『樫の実』に発表したのは、33歳のとき、遠く北海道上磯町のトラピスト修道院にいたときです。
トラピストの台地に立って、津軽の海を望んだとき、彼の心に去来したものは幼き日の母の思い出であり、ふるさとの思い出ではなかったでしょうか。
その心のふるさとこそ、兵庫県南西部に位置する自然豊かな城下町、龍野なのです。
市域の中央を南北に、龍野を育んだ母なる川、揖保川が緩やかに流れ、背後には原生林に包まれた鶏籠山を中心に小高い山々が連なり、その自然の織りなす四季の彩りは、詩情豊かな音色を奏でているようです。
この豊かな自然と風土が三木露風や矢野勘治、三木清、内海青潮その他多くの先覚者を生み、
そして彼らによって今日の龍野がつくられたのです。
そのことを如実に物語っているのが、龍野公園を中心に市内に点在する文学碑であり、頌徳碑なのです。